【登山紀行】初夏の飯豊山縦走Day1(前編)突如として訪れた危機的状況とは?

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テント場から眺める夕暮れの大日岳(飯豊山縦走2日目)


 

2018年7月。

雨上がりで水分を多く含んだ空気。
風が届かないほど深い樹林。
出だしからぶっ続けの急登。
そして、長ズボン。

この時、僕は登山における難題の一つ、ウェアリングにまつわる一つの答えに辿り着いてしまったようだ。

 

『 夏に長ズボンで山登りするもんじゃない 。』

 

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深い樹林に囲まれた急登の登山道。初夏の緑が眩しい。

 

雨上がりの登山道は、水蒸気のせいか、うっすらと白いモヤがかかり、湿度が尋常じゃない。
頭上を覆う木々に空気がピシャリと閉じ込められ、色濃い緑の葉や枝はピクリとも動こうとしない。

これじゃぁまるで、天然のサウナだ。

 

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梅雨明け前の週末、東京発の米沢行き夜行バス、JR米坂線の始発電車と登山バスを乗り継ぎ、東北地方の山奥にやって来た。
山形県福島県新潟県の三県境を走る飯豊連峰の登山口だ。

飯豊山は、東北地方の日本百名山の一座ではテント泊縦走が組める数少ないトレイルでもある。もちろん、テント泊に限った話ではなく、トレイル上には山小屋も多く、小屋泊での縦走プランも組むことが可能だ。

 

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急登の道を登りはじめてから4時間程経った頃だろうか。森林限界が近いのか、やっと風が通るようになってきた。

 

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急登の合間に、時折見せる好眺望


ついに天然クーラーの冷気を思う存分浴びる事ができる!
そう思い、足取りが軽くなる。

徐々に周りを覆う木々も少なくなり、眺望も得られるようになった頃、状況が一変した。

そして、夏山で起こりうるかなり危険な状況へと、飯豊山は変化していった。
飯豊山脈の稜線に出たころ、僕はある恐怖を感じ始めていた。

 

それは、『低体温症』だ。

 

夏には無縁に聞こえるその症状は、夏山でも陥りやすく、死に直結する恐ろしい症状だ。

サウナ状態から一変し、海から直接吹き付ける強い風を受けるようになり、急激に体温が奪われていく。

さらに高速で流れるガスの水分が、横なぶりの雨のごとく、狂暴さを一気に増していく。
風や雨を遮れる場所は、見当たらない。

 

『 ヤバい… 』

 

思わぬ状況に直面し、生命の危機を察知した僕の脳内では、アドレナリンが大量に分泌され始めた。

 

後編へつづく…